『窓のむこう』

小鳥遊 茜

彼女の背中には翼がある。

皆、何も言わないから、見えていないんだと思う。

でも僕にはくっきりと見える。

白い、純白の翼が。

僕にだけ見える。僕だけが知っている。僕だけが、彼女をわかってやれる。

皆は彼女のことを「そんな子じゃない」と言う。

何故、お前らから見える彼女がほんとうの彼女だと思い込む?

それは傲慢と言わないのか。

僕? 僕は知っているもの。彼女のほんとうの姿を。

ほら。また窓の外を見てる。

飛びたいんだろう?

今すぐに、この何の意味も無い世界から飛び立ちたいんだろう?

良いんだよ。僕だけはうなずいてあげられるから。

君のすることを否定なんてしないから。

雨が降っていた。

その日までは、僕も彼女のほんとうの姿を知らなかった。

教室の中で楽しそうに笑う、虚像しか。

雨の中、彼女は僕をまるで見知らぬ他人のように通り過ぎた。

あるいは、僕が目に入らなかったかもしれない。

無理も無い。彼女は傷ついて血を流していた。

でも…その後姿に。

白い、翼が。

僕にだけ見せた。

だからさ、良いんだよ。窓の向こうに行っても。

僕は咎めないよ。それが間違っていようとも。君が幸せなら。

僕は君の背を、ずっと見ているから。

-了-

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