『学園天国』

小鳥遊 茜

登場人物

加藤南斗(17)
高校2年生、サッカー部員。うわべだけ男前なヘタレ。あみに惚れている。
川名あみ(17)
アメフト部のマネージャーをしている可愛くて純粋な女の子。
美奈子(17)
サッカー部マネージャー。美人とは形容しがたい容姿をしている。
林(18)
引退したサッカー部の3年生。あみの彼氏。優男。
まさみ(17)
美女。南斗にホレている。
大森(16)
南斗の友人。小太り。
吉田(17)
南斗の友人。少々南斗に心酔してるフシがある。
寺田(17)
南斗の友人。オシャレさん。

学校の裏庭

 
女の子が顔を赤らめている。
「あの、私、加藤くんのこと、好きです!」
加藤南斗(17)のクールな顔。
南斗
「ごめんね…俺、今彼女作る気ないんだ」
「(悲愴な表情で)ええー!?」
南斗
「だから、これからも友達でいようね」
涙を怺えながら頷く女。
南斗、突然に空を見上げる。
南斗
「ごめん…一人にしてくれるかな…」
女、ぺこりと頭を下げ、涙を拭いながら走り去る。
一人になった南斗……突然踊り出す(空想)。

クラブのバー(空想)

 
スーツに身を包んだ南斗、軽やかにステップを刻む。
脇から女性が数人現われ、南斗と一緒に踊り出す。
南斗
「俺って、ちょ〜モテるぜ!」
南斗、Vサイン。

メインタイトル

『学園天国』

学校のグランド・放課後

 
生徒達がクラブ活動に勤しんでいる。
サッカー部では紅白試合が行なわれている。
部員1、南斗にパス。
グランドの周りを大勢の女子が囲んでいる。
受けた南斗、ドリブルでゴールへ向かう。
女子達、歓声をあげる。南斗を応援している。
立ち塞がるディフェンダー、林(18)。
林、南斗に躱されて豪快に転ぶ。
南斗、キーパーを振り切ってゴール。
女子達の黄色い声が響き渡る。
クールな南斗、ふうっと息を吐くのみ。
笛が鳴り、試合終了を告げる。
同じチームの部員達、南斗に駆け寄る。
部員2
「やるなー、南斗。お前すげーよ」
ニヒルな笑顔を浮かべながら、部員を引き連れてベンチ代わりの階段へ向かう南斗。ふとグランドの反対側を見る。
アメフトの練習場で、こちらを見ているジャージ姿の川名あみ(17)。
あみの美しい顔が、キラキラ光っている。
(空想)恍惚とした表情であみを見つめる南斗。
クールな南斗、階段に腰を下ろし、ペットボトルに口をつける。部員達、南斗を取り囲むように階段に座る。
部員3
「林センパイ、引退してからも練習付き合ってくれるけど、あんまイミないよなー」
林、一年生と談笑しながらグランドを歩いている。
部員4
「入部してからずっとベンチで、たった一回だけ出た試合で大失敗したらしいぜ」
部員3
「あー聞いた聞いた。キーパーの邪魔しかしなかったんだって」
南斗
「お前らなあ、せっかく来てくれる先輩に向かってそれはひどいだろう」
部員3
「わりぃわりぃ。南斗は優しいからなあ。だからモテるんだろーな」
マネージャーの美奈子(17)がくる。
美奈子
「かとーくん、お疲れ様―。はい!」
差し出されるタオル。
部員達、美奈子を見てあからさまに嫌そうな顔をする。
南斗、笑顔で受け取る。
南斗
「ありがとう」
南斗の白い歯が光る。
嬉しそうな美奈子。去っていく。
部員5
「おい、お前モテるのも大変だな」
南斗、クールに笑う。
(空想)吐き気をもよおしたような南斗の顔。タオルを投げ捨てる。
タオルを首に掛け、アメフトの練習場を見遣る。
やかんを片手に歩いている、あみの姿。

南斗の部屋・夜

 
『大阪ガイドマップ』を呼んでいる南斗。
南斗
「ふっふっふ」
(空想)あみの姿。笑顔。その唇。
バンっと本に手をつき、ガッツポーズする。
南斗
「告白するぞ!」

大阪・アメリカ村

南斗の声
「舞台は修学旅行、大阪だー!」
南斗とその友人、大森(16)、吉田(17)、寺田(17)が街を闊歩している。大森の手には、タコヤキと爪楊枝。
吉田
「いくらテロ事件で飛行機が危ないからって、大阪はねえよなー」
南斗
「まあいいじゃん。いっぱい買い物しようぜ」
寺田、鞄から『大阪ショップ2001』を取り出す。
寺田
「なあなあ、この店行ってみようぜ!」
南斗、ガイドブックを覗き込む。
南斗
「どこだよ。……南堀江かあ。こっからちょっと歩くぞ」
吉田
「すげえ、南斗わかるのか?大阪来たことあるんだー」
ふふん、と鼻を鳴らす南斗。
その後ろから、派手な格好をした女の子二人連れが南斗達を追い越していく。
女1
「だっさー。修旅生かなー」
女2
「やろうな。ガイドブックなんか持ってるもん」
南斗、ガイドブックを奪って寺田の頭を叩く。
南斗
「ばかやろう。田舎もんまるだしじゃねえか。こんなもん無くても俺全部わかってるよ」
南斗のリュックの中で『大阪ガイドマップ』が揺れている。
再び歩き出す一同。
隣のクラスの女子グループが南斗を見つけて駆け寄ってくる。その中に、ひときわ美人なまさみ(17)もいる。
女子1
「あー、加藤くーん。ねえ、ちょっといい?」
男達から遠ざかり、女子達は南斗を囲む。
女子2
「加藤くんさ、彼女とかっているの?」
南斗の声
「(嬉しそうに)こ、これは……」
うつむいているまさみ、徐々に顔を上げる。上目遣いで南斗を見つめる、その綺麗な笑顔。
南斗
「(クールに)いないよ」
きゃあーと歓声をあげる女子達。
女子3
「ほら、まさみ」
女子達、まさみを南斗の前に押し出して、自分達は二人から遠ざかる。
まさみ
「あのさ、今日の夜、ちょっと会ってくれない?」
南斗の声
「やっぱり!」
南斗
「いいよ」
まさみ、たちまち満面の笑顔。
まさみ
「じゃあ、夜ね」
女子達の方へ走って行くまさみ。
南斗の元に、男たちが走ってくる。
大森
「おい、なんだって?」
南斗
「夜に会ってほしいんだって」
ひょおー!と叫ぶ男ども。
吉田
「それって……告白じゃーん!?」
南斗
「なんだよ、違うよ」
寺田
「んだよ、そうに決まってんじゃん!」
南斗
「そうかな?」

ステージの上(空想)

 
南斗を中心にして、寺田と吉田が踊り出す。大森、和太鼓を叩きはじめる。全員学生服の上にはっぴを着ている。
大森
「は!」(合いの手)
吉田
「は!」
寺田
「は!」
南斗
「(クールに)は!」

アメ村の路上

 
男たち、歩き出している。
寺田
「いいよなー。南斗はモテてよお」
我に返った南斗、男たちに追いつく。
吉田
「でもよ、なんで彼女つくらねーんだ?よりどりみどり、ヤリ放題じゃんか」
南斗
「さあ……なんでかな。俺の心を射止める女性は、まだ現われないんだよな」
寺田
「もったいねー!」
吉田
「でもよお、まさみちゃんはかなりイイ線いってんじゃねえ?」
寺田
「おお、めちゃめちゃ美人だもんな」
南斗
「さあ、どうかな……」
(回想)まさみの綺麗な笑顔。
南斗の声
「確かに、すっごい美人だよな〜」
(回想)まさみを押しのけて、美奈子が現われる。すごい笑顔。
ぶるぶると頭をふる南斗。

道頓堀・ひっかけ橋の近く

 
買い物袋を大量に引っさげて歩いている南斗達。大森はアイスクリームを食べている。
脇道に、数人の人だかりがある。
目が留まる南斗。
金髪のオニイちゃん3人に囲まれている、あみと美奈子の姿。
   × × ×

兄ちゃん1「ねえねえ、どっから来たん?修学旅行生?おぼこくてかわいーなー」

 
兄ちゃん1、あみの左の壁に手をつく。

兄ちゃん2「俺らさあ、今からカラオケ行くんだよね。なあ、一緒にいかん?」

 
兄ちゃん2、あみの右側に手をつく。
締め出された美奈子、兄ちゃん2の腕をくぐって割り込む。
美奈子
「せっかくだけどお、美奈たちもう戻らないといけないんだあ」

兄ちゃん3「お前に聞いてねえよ」

 
兄ちゃん3、美奈子を羽交い締めにして輪から追い出す。
美奈子
「もう!なによおう!」
あみ
「あの、やめてください」

兄ちゃん3「声もかわええなー。な、いこーよいこーよ」

 
兄ちゃん3、あみの腕を取って連れて行こうとする。そこへ……
南斗
「やめろよ!」
南斗、あみを背に庇って兄ちゃん達を睨みつける。
美奈子、あみにくっついて南斗の後ろに無理矢理はいる。
美奈子
「かとーくん!美奈、怖かったのー」

兄ちゃん1「なんだあ?お前。邪魔するな!消えろ!」

南斗
「俺の大事な友達なんだ!お前らが消えろ!」
   × × ×
男たちが壁の影からトーテムポールのようにはらはらと見守っている。
   × × ×
兄ちゃん2、不適な笑みを浮かべる。

兄ちゃん2「かっこえーなー、ニイチャン。やるんか?ああ?」

あみ
「(ひっそりと)加藤くん、暴力はだめよ」
南斗
「(ひっそり)大丈夫(ニコッ)」
南斗、兄ちゃん達に近寄る。
南斗
「よし。話し合いをしよう。なっ」
南斗、兄ちゃん3の肩を抱いてあみ達に背を向ける。その手に握られた一万円札。
兄ちゃん3、あっけにとられるが札を奪い取り、胸ポケットに突っ込む。

兄ちゃん3「へへ、話のわかる奴じゃねえか」

 
兄ちゃん3、南斗から離れる。

兄ちゃん3「おい、行くぞ」

 
兄ちゃん3、歩き出す。

兄ちゃん2「おい、どーしたんや?」

 
後を追っていく兄ちゃん達。
   × × ×
壁の影から見ている男たち。
吉田
「すげえ、南斗不良を撃退しちゃった」
   × × ×
南斗
「大丈夫だった?」
答えようとしたあみを遮って、美奈子が南斗にすがり付く。
美奈子
「ありがとー!美奈うれしい!」
南斗が見ると、あみは笑顔で応える。
南斗も笑顔。
男たちが駆け寄って来る。
吉田
「すげえな!南斗!」
和気あいあいとした雰囲気。

ホテルの広間

 
レクリエーションが行われ、生徒達はとても楽しそう。
南斗も男たちと一緒に笑っている。
大森、やってきて南斗の肩を叩く。
大森
「おい南斗、次俺らの番だぞ」
南斗
「おう」
ステージに向かう二人。
吉田、ステージの照明を落とす。
   × × ×
あみと美奈子、二人で舞台上を見ている。
美奈子
「ねーねー、次美奈がラブラブのかとーくんの番だよー」
あみ
「(笑顔で)そうだね」
流れ出すカラオケの音楽。
美奈子
「これ、ケミストリだ!きゃー、美奈大好き!」
   × × ×
吉田、証明のスイッチを入れる。
ステージ上の南斗と大森がライトアップされる。大森、サングラスを耳にかけてぶら下げている。
生徒達から歓声と笑い声があがる。
歌い出す南斗。
たちまち黄色い声があちこちから沸く。
   × × ×
美奈子
「きゃー!!かっこいい、かっこいい!」
あみもステージを食い入るように見ている。
   × × ×
響く南斗の歌声。結構うまい。
南斗、あみを見つけてじっと見つめる。
   × × ×
美奈子
「ねえ、かとーくんこっち見てない?」
あみ、答えずにステージを見ている。
   × × ×
南斗の声
「おいおい、もしかして俺の方みてるんじゃねえか?」
歌っている南斗。あみを見つめる。
   × × ×
サビに差し掛かる。
あみ、ぷっと吹き出す。
ところどころから失笑が洩れる。
美奈は熱心にステージを見ている。
   × × ×
南斗の声
「わ、笑った?なぜだ……」
南斗、歌いながら大森を横目で見る。
大森のサングラスが落ちそうになっている。必死に掛け直すが、すぐずれる。
南斗の声
「俺を見てるんじゃなかったのか〜」
気持ちをこめてサビを歌い上げる南斗。

ホテルの廊下

 
レクリエーションが終わり、それぞれの部屋に向かう生徒達。
「加藤くん」
大森と歩いている南斗、呼び止められて立ち止まる。
少し緊張気味のまさみ。
南斗
「先行ってて」
大森
「おう」
笑顔のまさみ。

ホテルの庭

 
二人っきりのまさみと南斗。
まさみ、意を決して南斗を上目遣いで見上げる。
まさみ
「加藤くん……私の気持ち、判ってるでしょう?」
南斗
「……ていうと?」
まさみ
「わかってるクセに……」
熱っぽいまさみの瞳。
まさみ
「ね、私、加藤くんならいいよ」
南斗の声
「こ、これはまさかー!」
目を閉じるまさみ。
南斗の心臓
「どきどきどきどき」
まさみ
「加藤くん……好き」

ホテルのスウィートルーム(空想)

 
タキシードに身を包んだ南斗と、ドレス姿のまさみ。
目を閉じて唇をつきだすまさみの腰に手を回す。
もう片方の手でまさみの頬に触れ、指を滑らせて顎をくいっと持ち上げる。
まさみの唇に、南斗が近付いていく……

ホテルの庭

 
目を閉じたまさみに近付いていく南斗。
ふと目を上げる。
まさみの頭ごしにあみの姿が見える。あみはこちらに気付かず、庭を過っていく。
はっとしてまさみから離れる南斗。
まさみ、目を開ける。
まさみ
「加藤くん?」
南斗
「(クールに)ごめん。俺、君の気持ちには応えられない」
まさみから顔を背ける南斗。
まさみ、みるみるうちに涙が溢れてくる。
まさみ
「そうよね。ごめんね、馬鹿なことして。私、加藤くんがキスしてくれたら皆に言いふらそうと思ってたの。そうすれば、加藤くん私とつきあってくれると思ったの。ほんとにごめん!」
駆け出すまさみ。ホテルの玄関に駆け込んで行く。
南斗の声
「よかった〜!手ぇだすところだった〜」
   × × ×
あみ、一人で星空を見上げている。
南斗が近づく。
南斗
「なにしてんの?」
振り向くあみ。笑顔になる。再び空を見上げる。
あみ
「やっぱり都会って、星見えないんだなって思って……」
南斗、空を一瞬見上げるが、すぐ視線をあみに戻す。
綺麗なあみの横顔。
南斗の声
「チャンスだ!告白するんだ!」
あみ、南斗に向き直る。
あみ
「昼間、ありがとうね。助けてくれて……。ホント、助かっちゃった」
南斗
「ううん。そんなこと、当然だよ」
あみ
「うた……上手いんだね。美奈子なんか、加藤くんのファンになっちゃったみたいよ」
南斗、ぎゅっと拳を握り締める。
南斗の声
「言うんだ!今しかない!」
南斗
「あみちゃん、俺……」
ぐるるる、と南斗の下腹が鳴る。
南斗の声
「ぐっ…これは…昼間のタコヤキを食べ過ぎたか……?」
首を傾げるあみ。
南斗
「俺……俺……」
ぎゅるるるきゅーっ
南斗
「ごめん!急用思い出したー!」
叫びながら走り去っていく南斗。
不思議そうな表情のあみ。

トイレの個室

 
便器に座っている南斗。
南斗の声
「あ〜せっかくのチャンスだったのに……情けねえー!」

高校の外観・放課後

 
生徒達が帰路についている。

グランド

 
サッカー部員たち、ゼッケンをつけてウォーミングアップをしている。大勢の女子達がサッカーコートを取り囲んでいる。今日はアメフト部の練習がなく、あみの姿も見える。
部員3
「あれ、南斗は?」
部員2
「さあ?まだじゃねーの?」
部員3
「おっそいなー。今日は本気の紅白試合だってーのに」
赤ゼッケンの二人。
白ゼッケンの林が屈伸をしている。
部員3
「なんか、林センパイ今日気合はいってんなー」
頷く部員2。

学校の靴箱{ロッカー}

 
運動着の南斗、手紙を片手にロッカーの前に立ち尽くしている。
すうっと息を吸い込む。
ロッカーを開け、入っていたノートの間に手紙を挟む。
南斗、ロッカーの名前を確認する。
南斗の声
「よくあるコメディーで、ロッカーを間違えてラブレターを入れちゃうパターンがあるけど、俺はそんなヘマはしないぜ」
ロッカーを閉じ、手を合わせて祈る。
南斗
「よし!」
グランドに向かって歩き出す南斗。

グランド

 
センターラインを中心に並んでいるサッカー部員達。
南斗は赤ゼッケン。
視界の端に、あみの姿が見える。
礼のあと、選手達はそれぞれのポジションに散る。
あみは、センターサークルの方を見ている。キックオフは白ゼッケン、林と部員5が並んでいる。
南斗の声
「あみちゃん!俺、君の為に頑張るからね!」
あみの元に、美奈子が駆け寄って来る。
美奈子
「もお!あみちゃん!美奈のノート返してよー!」
南斗の耳がぴくりと震える。
南斗の声
「まさか……」
あみ
「あ、ごめん。ロッカーに入ってるんだ」
美奈、グランドの選手達を見渡す。
美奈子
「しょうがないなあ。美奈が取りに行くよ」
南斗の声
「まさかまさか……」
ピーッ!
キックオフの笛が鳴る。
センターサークルの林、ボールを蹴る。
走り出す選手達。
南斗、立ち尽くして走っていく美奈子を見ている。
南斗
「どおしよう……」
部員3
「南斗!」
部員3、南斗にパスをだす。
南斗、ボールを受けて走り出す。
南斗の声
「どうすればいいんだー!」
思いっきりボールを蹴る南斗。
ボールはラインを越えて、場外に飛んでいく。
部員2
「何やってんだよ、南斗ー」
南斗
「わりぃ……」
白ゼッケンのスローイン。
ボールを眼で追いながら、荒く息を吐く南斗。
南斗の声
「落ち着け、落ち着くんだ。美奈子が手紙を見る前に、取り返せばいい」
(空想)手紙を片手に駆け寄ってくる美奈子。南斗に抱き付く。

美奈子(空想)「かとーくん!やっぱりあなたは美奈のことすきだったのねえー!」

 
グランドの真ん中で青い顔で立ち尽くす南斗。
「加藤!」
赤ゼッケンが、南斗にボールをパス。
かろうじて受け止める南斗。しかし白ゼッケンに簡単にボールを奪われる。
部員4
「なんだ?南斗、今日調子悪いのか?」
部員3
「さあ……」
部員3、首を傾げてからボールを追って走り出す。

靴箱前

 
小走りに駆けてくる美奈子。
あみのロッカーを開ける。
南斗がラブレターを挟んだ、あのノート。
美奈子、ノートを鞄にしまう。

グランド

 
美奈子、戻ってくる。
点数表に、『白3点・赤0点』の文字。
美奈子
「あーん、負けちゃってるぅー」
あみの横に並ぶ。
美奈子
「ね、白勝ってるね」
あみ
「うん!」
あみ、満面の笑顔。
   × × ×
笛が鳴る。
散っていく部員達。水分を取ったり汗を拭いたりし始める。
南斗、美奈子の方へ走り、美奈子を捕まえる。
美奈子
「きゃあ、かとーくん……」
南斗
「ちょっと、来て」
美奈子の腕をとって、あみから遠ざかる。
南斗
「ノートの中、見せて」
美奈子
「へっ?」
南斗
「いいから貸せよ」
南斗、美奈子の鞄を奪い取ってノートを開ける。何も無い。
南斗
「なあ……この中、その……手紙入ってなかったか?」
美奈子
「手紙?なんの?」
ふうっと息をつく南斗。
南斗
「いや……無かったならいいんだ」
ノートと鞄を美奈子に押し付けて、グランドに向かう南斗。
南斗の声
「よかったあ〜。あのノートじゃなかったんだ〜」
あみ、美奈子に近寄る。
あみ
「(ニヤニヤと)ねえ、何だったの〜?」
美奈子
「えー。わかんないけどお、美奈といっぱい喋ってくれたー」
あみ、美奈子を小突く。
あみ
「よかったじゃーん」
笛が鳴り、試合再開。
美奈子、ノートを鞄にしまい、タオルを取り出す。
はらりと落ちる南斗の手紙。
あみ
「あれ?なんか落ちたよ」
拾い上げるあみ。
美奈子
「えー?……手紙?」
美奈子、はっとして封筒を開ける。
手紙を覗き込む美奈子とあみ。
美奈子
「大好きな君へ何度も打ち明けようとしたけど、なかなか言い出せませんでした。君が好きです。俺とつきあってください。加藤南斗……えエエエエ!!」
びっくりのあみと美奈子。
あみ
「やったじゃない!おめでとう!」
美奈子
「美奈……美奈うれしいイイイ!」
グランドを見る二人。
選手達は走り回っている。
   × × ×
得点は、白3対赤2。
南斗、ドリブルしている。
南斗の声
「もうすぐだよ、あみちゃん!もうすぐ君をこの胸に抱けるよ!」
ベンチの部員、手で合図する。
南斗の声
「タイムはあと少し。俺が、君の為にゴールを入れてあげる!」
目の前に立ち塞がる林。かつての練習試合とだぶる。あの時と同じように、林を軽く躱す……
が、しかし!林は巧みにフェイントをかけ、南斗からボールを奪う!
南斗
「そんな……!そんな馬鹿な〜!」
膝をつく南斗。
林、高く高くボールを蹴り上げる。それが頂点に達した時、笛が響き渡る。
「試合終了―!」
ぽんっとボールが着地する。
グランドの周りから、大きく大きく歓声があがる。
「やるじゃねえか!林!」
「いいぞー!引退後のヒーロー!」
女子の集団に背中を押されたあみが、グランドの中央に進み出る。
膝をついたままの南斗。
あみ、照れ臭そうに走り出す。南斗を通り過ぎ、林の胸に顔を埋める。
南斗
「あ、あみちゃん……?」
脱力する南斗。
あみの肩を抱いた林、群集に頭を下げる。
「俺の引退試合は、今日だ!俺のサッカーは今日が最後。受験に向けて本腰を入れるよ。みんな、今日までありがとう!」
部員3
「先輩、医学部でしたよね。いいなあ、あみちゃんは将来医者のヨメじゃん」
あみ
「(嬉しそう)もう、からかわないでよ」
「なんだよ。俺はそのつもりだぜ?」
大歓声。
南斗
「は……はは……」
脱力する南斗に、美奈子が突進する。
美奈子
「かとーーくーーん!美奈もかとーくんを愛してまーす!」
熱い抱擁のあと……
美奈子
「ぶっちゅ〜」
熱いくちづけ。
更に大歓声。
部員4
「はは、おかしいと思ってたんだ。ただの恋煩いだったのね」
きつく抱きしめられ、泣き笑いの南斗。
エンディングテーマが流れ、グランドのみんなが踊り出す。

-了-

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